カンボジア地雷問題を検証するツアーを担当

 

ジャパングレイス寄港地部:菊池 真希子(きくちまきこ)

現地で立ち寄るレストラン選びにもこだわりを

私は2013年にジャパングレイスに入社しました。当時、研修を兼ねてカンボジアの「地雷問題を学ぶツアー」に参加したのですが、このとき、地雷の被害で脚を失った人にたくさんお会いしたときは衝撃を受けました。

NGOピースボートでは、地雷除去や被害者の方々へのご支援のために募金活動を行っており、募金を通じて集まったお金を、現地の方にお役立ていただいています。実際に被害者の方々の姿を前にした際は、私たちはとても意義ある活動をしているのだなと痛感しました。

以来、現在に至るまで、年に1~2回のペースで地雷問題を検証するツアーに携わっています。具体的な業務内容は、フライトやホテルの手配など、ツアーの準備に関わることです。業務を担当するようになってからは、カンボジアにもっと貢献したいという思いと、ツアーに参加して下さるお客様に、より充実したプランをご提供したいという気持ちが強まるようになりました。

 
 

そこで、自分なりに考えて、ツアー中に食事で立ち寄るレストランやお土産物店は吟味するなど、工夫を重ねています。 ひとつのツアーに付き、参加して下さるお客様は30名ほどです。その方々からお預かりするツアー代金は有意義に使わせていただきたいので、ランチで訪れるレストランは入念に下調べをしてから決めます。

現地のNGOに協力をいただいて、たとえば、地元の子どもたちを支援しながら運営しているお店を訪問するなど、ジャパングレイスならではのプランに仕上げられるよう心がけています。

地元の子どもたちを支援する活動にも接触

訪問したレストランのなかには、児童労働や児童買春に関与させられていた貧困家庭出身の子どもたちに手を差し伸べているお店もあります。子どもたちを学校に通わせたうえで、高校卒業後にはNGOの運営する店舗でトレーニングを受ける機会を提供しているのです。彼らはトレーニングを積んだあとにシェフやウェイターの職に就くので、自立支援にもなり、作る料理はとても美味しく、サービスもしっかりしています。

 

レストランで食事をしたあとは、このお店が経営しているお土産店に移動して、店舗の創設者の方の話を伺うなどの時間も設けます。このお土産店には、トレーニングを受けている最中のメンバーの手作り雑貨などが販売されているので、作り手の顔の見えるものを買うことで、自立支援や国際協力をすることができるのです。

また、毎回ではありませんが、首都のプノンペンへの訪問をコースに入れる際には、トゥールスレン博物館という、ポルポト政権時の刑務所を訪ねることもあります。この刑務所に無実の罪で投獄され殺された、1万5千~2万人ともいわれる人々のうち、生存者はほんの8名ほどだとか。そのなかのおひとりから証言を聞く機会を設けることもあります。

企画運営するうえで心がけているのは、お客様に、ピースボートのツアーでしか得られないものを感じ取ってもらいたいということ。滞在期間は5日ほどしかないので、その間にぜひ濃密な体験をしていただきたいと思っています。

 

参加者の方々の心の変化に触れると感動します

 カンボジアのほかに印象が強く残っている国は、フィリピンのマニラにあるスラム街です。貧困問題が深刻で、たとえば、1本の木を柱にして、何枚ものビニール袋で覆うように作ったテントに住んでいる家族もいます。

その様子を目の当たりにしたときはとてもショックで、この光景をツアーの参加者の方々にどう感じ取ってもらうのがいいだろう……と、悩みました。でも、やはり現実をそのまま見てもらうことが大事だと思い、現地のNGOの方に、「訪問が可能な家を1件紹介して下さい」とお願いしました。それで下見に伺って、直接、その家の方に訪問の依頼をさせていただきました。

このときのツアーの参加者は10代後半から20代後半ぐらいの、比較的若い年齢の人が多かったのを覚えています。いざ訪問するお宅に伺うと、NGOの方が間に入って下さり、このツアーの趣旨を説明して下さいました。「ここにいる日本の人たちは、日本で暮らしていますが、今回はマニラのあなたたちの生活を見ることを通して、自分たちに何ができるのかを考えたいそうです」。そう説明して下さると、そのご家族はツアーの参加者に向かって、「私たちのことをぜひ知ってほしい」とおっしゃいました。

自分たちの力ではこの暮らしはどうしようもないから、知ってもらいたいと。そして家の内部まで見せて下さったのですが、参加者の方々は、日本での自分たちの暮らしとあまりにも違うため、驚かれて涙を流している方もいらっしゃいました。

参加者の方々の考えや思いは、さまざまな国を訪れるたびに豊かに変化なさいます。この仕事をしていて最も充実感を得られるのは、このように、参加者の方々の変わっていく様子を見るときです。複数の国の人たちの暮らしぶりを見ることで、皆さんはご自分なりに、「日本に帰ったらこういうことができるのではないだろうか……」と考えを巡らせるようです。

こういう声を、旅を終えてからの報告会でお聞きすると、とても感動します。私自身が、ツアーに対して提案できることは本当に微々たるものですが、そのことを通してお客様の心が動くのだと思うと感慨深いです。本当に意味のある仕事をしているのだと、誇りに思えます。

 

(取材・文/田中亜希:キクカクハナス)

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